秋田商工会議所経営情報/ご存じですか?

〜キャッシュフローから見えてくる〜
企業経営の真の姿


キャッシュフローとは何か
 キャッシュとは、現金および現金同等物のことです。 また、現金同等物とは、期日3カ月までの元本保証金融商品のことで、比較的容易に換金できるもののことです。
 キャッシュフローとは、この「キャッシュの流れ」のことを言います。 企業活動は、保有する経営資源を効果的に活用して、対象顧客のニーズの満足を図り、 同時に人的資源である社員の満足も図り、継続企業として経営目的の実現を図り続ける活動のことです。 これらの活動を人体の生命維持活動にたとえれば、キャッシュフローとは、まさに、 人体の生命維持活動における血液の循環に相当するものと言えるでしょう。 従って、企業活動における円滑なキャッシュフローは、 人体における円滑な血液循環が健康な生活のバローメーターの一つであることと同様に、 経営の重要なバロメーターの一つです。

キャッシュフロー計算書
 企業の一定期間(たとえば、一会計年度)のキャッシュフローを表したものが、 キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement,C/F)です。上述のように、 キャッシュフローを人体における血液循環にたとえれば、キャッシュフロー計算書は、 人間の各種健康診断における血液循環の状況を示す検査データと言えます。
 企業の経営状態を示すものとしては、一般的に、貸借対照表や損益計算書があります。 しかし近年、キャッシュフロー計算書が重視されるようになってきました。 なぜなのでしょうか。その理由を考えてみましょう。

「勘定合って銭足らず」があり得るから
 まず、損益計算書上ではきちんと利益が計上されていても、資金が不足して、 支払不能となる場合があり得るからです。たとえば、次のような場合です。
P/L (単位:千円)
売上高 100,000
売上原価 65,000
 売上総利益 35,000
販売費および一般管理費 25,000
 営業利益 10,000
営業外収益 1,000
営業外費用 1,500
 経常利益 9,500
特別利益 0
特別損失 1,000
 税引前当期純利益 8,500
 法人税等 4,300
 当期純利益 4,200
営業収支 (単位:千円)
営業収入 85,000
営業支出
 商品代支払 90,000
 販管費支払 15,000
営業収支 △20,000
受取利息収入 200
支払利息支出 1,000
経常収支 △20,800

 これを見ると、損益計算書では当期純利益が4,200千円計上されていて、立派な黒字決算です。 しかし、営業収支は20,000千円の不足、経常収支も20,800千円の不足です。 他に資金が確保できなければ、支払不能です。 まさに「勘定合って銭足らず」の状況です。 こうした黒字倒産はあり得ることです。
利益は、決算方針や会計基準等の影響を受けるのに対してキャッシュフローはそれらの影響を受けないから
 さらに、利益は、企業ごとの決算方針の影響を受ける宿命を背負っています(ちょっと大げさですが)。 たとえば、減価償却が一つの例です。 限度額いっぱい減価償却する場合と、限度額を超えて償却する場合、 また、限度額までは償却しない場合とでは、それぞれ営業利益が異なります。 一方、キャッシュフローは、それらのどの場合でも金額は同一になります。 まさにキャッシュフローは「事実」をストレートに示すものなのです。

 以上のことから、たとえば、同一企業の各期の利益の変化を検証するよりも、 各期のキャッシュフローの変化を検証する方が、企業活動の実態を把握しやすいことになります。 また、異なる国の企業同士を比較対比するときにも、キャッシュフローを用いれば、 各国の会計基準の影響を除外できることになります。 グローバルに投資等を考える主体にとっては、まことにうってつけの判断材料と言えます。

キャッシュフロー経営

(1)キャッシュフロー経営とは何か
 キャッシュフロー経営とは、キャッシュフローを重視した経営のことです。

(2)キャッシュフロー経営のねらい
 一般的に、キャッシュフロー経営の目的は、次の4つです。
   ◇ キャッシュを創出する力を大きくする
   ◇ 倒産しない企業体質をつくる
   ◇ 企業価値を大きくする
   ◇ キャッシュフロー計算書を開示して利害関係者に企業業績を理解してもらう

(3)キャッシュフロー経営の求められる背景
 一つは、経営環境変化への迅速な対応が求められてきているということがあります。 全般的に、商品のライフサイクルが短くなってきて、今日の稼ぎ頭が明日も稼ぎ頭である確率が低下してきています。 先を見越して絶えず明日の稼ぎ頭を開発しなければなりません。その開発のためにはキャッシュが必要です。 キャッシュフローを適切にコントロールしながら、明日の稼ぎ頭をつくって行かなければなりません。
 二つめの背景は、グローバリゼーションへの対応が求められてきているということです。 経済活動の国際化は、会計基準の国際化がなくして成立しません。 国際会計基準は、市場・株主重視、ストック重視からフロー重視になってきており、 真実性の原則の貫徹、透明性の確保に向かっています。 キャッシュフロー計算書は、そうした流れに対応できるものなのです。 我が国の場合も、株式公開企業から導入が始まっており、いずれ近い将来一般化するのではないかと見込まれます。
 また、金融機関においては、企業に対してますますシビアーな評価を行ってきております。 融資申込みに対しては、従来の財務諸表(B/S、P/L等)だけではなく、 キャッシュフロー計算についても作成・提出を求めるケースもまれではなくなってきています。

キャッシュフローの3区分とフリーキャッシュフロー

(1)キャッシュフローの3区分
 キャッシュフローは、次の3つに区分します。
   ◇ 営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)
 営業活動からどれだけ余裕資金が新しく創出されたか
   ◇ 投資活動によるキャッシュフロー(投資CF)
 営業キャッシュフローから生まれた資金を設備、買収、 子会社投資等にどれだけ使用したか(将来への資金使途)
財務活動によるキャッシュフロー(財務CF)
 投資キャッシュフローの不足を借入金、社債、増資等でどのように調達したか

(2)フリーキャッシュフロー(FCF)
 フリーキャッシュフローとは、 営業キャッシュフローから現業維持に最低限必要な投資キャッシュフローを引いたものを言います。 これをどのように活用するかが、企業の戦略になります。

キャッシュフロー改善のポイント
 キャッシュフローを重視して経営することがキャッシュフロー経営です。 そのためには、まず、自社のキャッシュフローの改善に取り組まなければなりません。
(1)営業キャッシュフローの改善
 営業キャッシュフローがマイナスという場合は、「営業不振」です。 かつての稼ぎ頭が今日の稼ぎ頭ではなくなってしまったのです。 早く、次の稼ぎ頭を開発しなければなりません。
 当面は、利益率向上(販売単価引上げ―そのためには、高単価でも売れる商品の導入、非価格競争が必要、 売上原価引下げ、販管費の削減等)、売上債権の早期回収、不良債権発生防止、棚卸資産の回転率向上、 業績評価システムの改善(売上高目標のみから粗利益目標・売掛金回収目標管理へ)等が必要です。 また、「現金化循環日数」の短縮という考え方があります。 これは、在庫日数と売掛金日数とを足したものから買掛金日数を引いたもののことで、これが短くなるようにすることです。

(2)投資キャッシュフローの改善
 明日の稼ぎ頭の開発のためには、計画的な投資が欠かせません。 基本的には、フリーキャッシュフローの一部を投資に回すのが望ましいのです。 しかし、ここ一番での大きな投資には、フリーキャッシュフローで不足する場合があります。 このときには、固定資産や資有価証券を売却して投資キャッシュフローを増やすことも必要になります。 また、投資判断においては、DCF法等を用いて、 投資の結果得られる今後の各期のキャッシュフローを現在価値に引き直して評価することも大切です。

(3)財務キャッシュフローの改善
 営業キャッシュフローや投資キャッシュフローが不足する場合、財務キャッシュフローで調整しなければなりません。 この場合、設備投資等については、長期資金の導入により対応することが求められます。 ただし、過大な有利子負債があると経営を圧迫しますので、計画的に既存有利子負債を削減すること、 金融機関への依存体質を低下させることが望ましいと言えます。

キャッシュフローに着眼した経営戦略

(1)自社事業のPPM分析
 自社事業を、マーケットの成長率、マーケットの相対シェアの2つの切り口からプロットしてみると、 スター、金のなる木、問題児、負け犬のいずれかになります。
 このうち、「スター」では、長期的に収益を見込めるため、継続的に投資して、
相対シェア(競争力)


競争優位性を維持して行かなければなりません。 次に、「問題児」では、収益ポテンシャルが大きい割には、まだ不安定なので、相対シェアを高めるための「攻め」が必要です。 当然、投資も必要です。
 また、「金のなる木」では、当面稼げる間安定的に営業キャッシュフローを確保するための「守り」がポイントです。 投資はあまり必要としません。
 さらに、「負け犬」では、撤収してキャッシュを回収することが求められます。
 図の→のようにキャッシュを振り向け、問題児をスターにして行くことが戦略となります。

(2)キャッシュフローダイヤグラム分析
 自社の3区分したキャッシュフローのうち、営業CFと投資CF、さらにフリーキャッシュフローFCFを、 連続する何期か、次の図にプロットしてみると、この間の経営の軌跡を確認できます。 基本的には、成長プロセスでは、営業CFがプラス、投資CFがマイナス、FCFがマイナスとなる場合が多いでしょう。 当然不足分は、財務キャッシュフローでまかなうことになります。 安定成長プロセスでは、営業CFがプラス、投資CFがマイナス、FCFがプラスとなる場合が多くなります。

 戦略としては、常にFCFをプラスのエリアに位置しておき、ここ一番の投資のときに、 FCFが一時的にマイナスの位置に移動する、という動きをとることが一般的です。
 長期的には、FCFがゼロの線上をジグザグに進んで行くことになります。(FCF=0は、45度線)
   @成長プロセス
   A安定成長プロセス
   B再成長プロセス
 図で、営業CFプラスは、営業順調、営業CFマイナスは、営業不振を示します。
 また、投資CFプラスは、リストラクション実施、投資CFマイナスは、積極投資実施を示します。
 これは、他社の戦略を読むときにも、有効です。


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